『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)情報まとめ

天外さんがfacebookで『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』について投稿した記事をまとめました。売れ行きがよくてAmazonの在庫がおいつかないようなので、お手元に届くまでぜひこちらを参考にしてみてください!

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・・情報①

 

ネッツトヨタ南国の横田英毅さんの経営学を解説した本が今日発売です。

 

天外伺朗著なので印税は横田さんには入らない(笑)。自分でいうのもなんだけど、これはかなりの自信作!横田さん自身も気づいていなかった「横田英毅経営学」の真髄をかなり解き明かす事が出来ました。「人間性経営学シリーズ」の5作目ですが、ようやく横田英毅さんという実例を得て、「フロー経営」を具体的に深く掘り下げる事が出来ました。

 

名経営者の多くは大病を経験していますが、それは「死」と直面して「意識の変容」を起こすから。横田さんは大病はしていませんが、そのかわりに幼少期に創業者のおじいちゃんによる「無条件の受容」を体験されています。「大病」か「無条件の受容」が、名経営者が自然に育つ条件でしょう。

 

「大病」も「無条件の受容」も体験していない、ごく普通の経営者をどうしたら名経営者に導けるかということが、我々「フロー経営」をお伝えしている者に与えられた大きな課題ですが、そのヒントがこの本には満載です。

 

全般的に「天外塾」『横田塾』における横田さんの発言と、塾生や私との白熱した生々しい議論をそのまま掲載しており、多少冗長なところはありますが、とても読みやすいと思われます。もちろん、要所要所は私の詳しい解説がついています。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・・情報②

 

 昨日のアマゾンのランキングは120位まで上がりました。出だしは上々!

横田英毅さんはマスコミに頻繁に登場する超有名人ですが、驚いたことに、この本が最初の経営書です。

 

 じつは今まで3つの出版社から、それぞれ執筆依頼があり、インタビューを受けてライターさんが原稿をまとめたのですが、3回とも原稿料をお支払いしてボツにさせてもらった、とおっしゃっていました。内容のクオリティーに関するハードルがすごく高いようです。

 私の著作が名誉ある最初の経営書として、出版のお許しをいただけた事はとても光栄です。でも・・・種を明かせば・・・天外塾での横田さんの発言をそのまま載せているだけで、私の記述が少なかっただけでしょう(笑)。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報③

 

 ソニーに関心ある人は、ぜひこの本を手に取ってみて欲しい・・・。私が入社した1964年のソニーは、明らかにこの本に書かれた「フロー経営」真っ只中にあった。

 1995年に経営が変わり、ジャック・ウエルチを追いかけてアメリカ流の「合理主義経営学」を導入し、「フロー経営」を完璧なまでに破壊してしまった。以来、今に至るまで低迷から這い出せていない。そのマイナスの変容は、横田英毅さんというリフェレンスを得ることによって鮮やかに浮かび上がってくる。

 

もっとも、いまでこそこうやって偉そうに解説しているが、その時点の私はソニーの経営が「フロー経営」であったことを知らず、合理主義経営との違いも理解しておらず、社内で何が起こったのかもわからず、ひたすら右往左往していただけなので、その時の経営陣とほぼ同罪だ。

 

ソニー再生のカギはこの本の中にあるのだが、いまのほとんどの従業員は1995年以降に入社しており、「フロー経営」を肌で実感しておらず、はたしてこの内容が身体的に把握できるか、心もとない。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報④

 

 横田英毅さんが一塾生として天外塾にご参加いただいた時、コンサルタントの塾生から質問があった。「もしも、会社がすぐにでも潰れそうな状況にあったとしたら、いったいどうしたらいいでしょう?」

 

横田さんなら、従業員を集めて議論させるという。自分は黙ってそれを聞いているだけ。時間はかかるだろうけど、「じゃあ、みんなの給料を半分にして当座をしのぎ、頑張って盛り返そう!」といった結論が出る、という。経営者がトップダウンでそういう結論を言ったら、皆は反発し、やる気を失って破綻に向かうが、自分たちで決めればうまくいく。

 ところが、一般の企業で状況が悪くなった時の議論は、お互いに次元の低い非難合戦になるのが常であり、ひとりでに解決に向かう事はない。

 

そういう次元の低い議論と、横田さんのような問題解決に向かう議論と、いったい何が違うのだろうか?どうしたら問題解決の議論を主導できるだろうか?

 まだ、この本はお手元に行っていないと思うので、ここでひとつ考えてみてくれませんか? なぞ解きはまた明日・・・

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑤

 

 1991年に超優良企業と思われていたIBMの業績が急降下した時、CEOのエイカーズが、「うちの従業員は働きが悪い」と激怒したのは有名な話。その後彼がいかに再浮上策を打ち出してもうまくいく訳はない・・・。

 

 こういうメンタリティーを私は「賢者の演出」と呼んでいる。現状を賢く分析し、解決策を賢く提示し、これをやれっというやり方しかできない。ところが、自らの責任は問わず、絶えず外側に業績悪化の要因を求めるものだから、その解決策はことごとく見当はずれ、解決に向かうはずはない。従業員は、「本当の要因は大型電算機の時代が去ったことに気付かなかったトップの責任」と思っているので、やる気を失ってしまう。

 

 「賢者の演出」にはまっている人は、沈黙が苦手だ。従業員に解決策を議論させて、自分は黙って座っている、といった芸当は金輪際できない。自らが従業員より賢いことを常にアピールしていないと生きてゆけないのだ。深層心理学的には、心の底に劣等感を抱えており、その代償作用としての優越感が表に出ている。

 2003年のソニー・ショックの時も、トップは同じ状況だった。

 

 あるとき、ネッツトヨタ南国の若い女性が、外部のシンポジウムで「横田さんはどんな人ですか?」と聞かれ、「そうですね、ひとことでいうと戦略的に存在感を消している人です」と答えたという(P25)。指示・命令・叱責・激励など一切せずに、一見何の干渉もしない。だけど、横田さんの存在そのものがすべてがうまくいく源泉になっている。会社がおかしくなった時の従業員の議論も、横田さんが何も言わずにそこに座っているから問題解決に向かうのだ。こういうマネジメントスタイルを、私は「存在(BEING)のマネジメント」と呼んでいる。それに対して、経営者が率先して行動し、発言することを求める通常のマネジメントスタイルを「行動(DOING)のマネジメント」の名づけた。

 この本は「存在のマネジメント」のバイブルのつもりだ。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑥

 

 この本は「人間性経営学シリーズ」の5冊目。このシリーズでは、いまの産業界に漂う閉塞感を一挙に打ち破る新しいマネジメントスタイルをご紹介している。この潮流は、最近ではハーバード・ビジネススクールなどでも断片的に取り上げ始めており、ブラジルのセムコ社やアメリカのゴア社などが有名だが、創業期のソニーでも見られたように、もともと日本の伝統的な経営に近い。年配の方は、むしろ懐かしさを覚える経営スタイルともいえる。

 

私の場合には1964年に入社した当時のソニーでたっぷりそれを体験した。さらに1995年から今度はアメリカ流の「合理主義経営学」を導入したために「人間性経営学」あるいは「フロー経営」が徹底的に破壊されていくのを、内部でリアルタイムで詳細に観察できた貴重な体験をもとに「人間性経営学」として体系化した。

 

日本では、ネッツトヨタ南国の横田英毅さん、未来工業の山田昭男さんなどが有名だが、その経営学の真髄はまだきちんと掘り下げられていないように私には思われ、本書がその解明の端緒になればいいな、とほのかに期待している。

 

ネッツトヨタ南国でも未来工業でも、従業員の「やる気」「働きがい」「人間性の発揮」を最も重視しており、上司から部下に対する指示命令は一切なく、各自は自分の仕事は自分で決める。思いついたら上司にはかることなく、即実行できるのだ。失敗して尻拭いする権利も与えられている。

 

山田昭男さんはそれを「ホー(報告)レン(連絡)ソウ(相談)はいらん。ポパイにでも食わせておけ」と表現しておられる。

 勢いの良かったころのソニーでも「本当に面白い商品を考え付いたら、上司に内緒で物を作れ!」、「失敗したら、闇から闇に葬れ!」など、下の勝手な暴走を「よし」とする風潮があった。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑦

 

世の中の経営者の98%位は、いかに自分が賢いかを懸命に装って、絶えずアピールする「賢者の演出」にはまっている。したがって、横田英毅さんのように、空気のように存在を消して、まったく装うことなく「愚者の演出」をするというマネジメント・スタイルがあり、経営がきわめてうまくいくという事を、ほとんどの人は信じられないだろう。

 

「愚者の演出」という言葉は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』から借用した。西郷隆盛や日露戦争の総大将、大山巌が、戦国時代からの大将学の流れをくんで、愚者を装ってすべてを下にまかせていたという。これは、まさしく「フロー経営」だ(本書P46)。

 

 「薩摩には戦国からの伝統として大将になった場合の方法というものがあった。自分がいかに賢者であっても愚者の大らかさを演出演技するという一種魔術的な方法である」(司馬遼太郎『坂の上の雲』)

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑧

 

 横田英毅さんのネッツトヨタ南国と、山田昭男さんの未来工業は、ともに「成果主義禁止」、「指示・命令をしない」、「仕事は自分で考えてやる」、「従業員の”やる気”、”働きがい“を重視」などの共通点がある。こういうマネジメントを実施している企業はほんの少数だが、私は「フロー経営」、「燃える集団型マネジメント」などと呼んでいる。

 

しかしながら、何から何まで同じではなく、相違点もたくさんある。この本では、横田英毅さん自身の言葉で、共通点と相違点が語られている。

 最も際立った相違点は、人財の採用に関するフィロソフィーだ。ネッツトヨタ南国では、最低30時間から120時間の面接をし、人間性や価値観を大勢で見て、とても厳密な選別をする。

未来工業では、どういう人を、いつ、どういう待遇で採るか、一切を現場にまかされており、普通は最初に応募してきた人を採用する。つまり、ほとんど選別をしない。

 

同じように「フロー経営」を実行していても、このように採用の仕方が違うと、それに応じてオペレーションのフィロソフィーが違ってくる。採用のフィロソフィーとオペレーションのフィロソフィーがどうリンクしてくるか、これは「フロー経営」の真髄に関係してくる。この本では、横田さんと天外の議論を中心に、それを詳しく分析している。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑨

 

 ネッツトヨタ南国では、1980年の創立以来下記の標語を掲げてきた。いずれも一般常識の正反対だ。

 

①組織図を作らない

②上意下達をしない

③多数決をしない

④真似をしない

⑤プロに頼らない

⑥マニュアルを作らない

⑦失敗を咎めない

⑧できない理由を探さない

⑨教えない

 

 これらはいずれも、人が育ち、企業の風土が良くなり、横田さんが考える企業文化の育成のために、とても深い考えに基づいている。中々その考えに到達することは容易ではない。本書のタイトルは、⑨からいただいた。

 

このひとつづつを解説するより、なぜこのようなポリシーを作ったか、塾生に考えてもらうというのが横田さん流のやり方だ。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑩

 

 いまの日本の学校教育は、「教える教育」「与える教育」しかない。その中で育ってきたほとんどの人は、横田英毅さんのように「教えない教育」「引き出す教育」で人財が育つということは信じられないだろう。

 

 しかしながら、教育学の中にはソクラテスの昔から「引き出す教育」という潮流も存在していた。教育(EDUCATION)という言葉の語源は、ラテン語のEDUCATIO(引き出す)だ。

 

 たとえば、グリーンバーグの「サドベリー教育」では、学校側が準備した一切の授業はなく、子どもたちは自由に遊ぶことが奨励されている。やがて、遊びつくした子どもは何かを勉強したいと思い、自ら企画をして先生と交渉して授業を受ける。自ら「学びたい」という内側からの動機に基づいた学びは、外側から強制された学びの数十倍の効率が上がり、たとえば、小学校6年間で学ぶ算数の内容を20時間余で完璧に身につけるという。サドベリー卒業生の大学進学率は80%にのぼり、そのほとんどは第Ⅰ志望に入る。

 

 一般に、即戦力を得るために、手っ取り早く知識やノウハウを与えようとするが、これは能力の最も表層的な層だ。それより一段深い層に、「知識や能力を自分でいかに獲得するか」という能力がある。さらに、第3層には「自分に必要な知識やノウハウは何か」を嗅ぎ取る嗅覚がある。さらには、自らの「やる気」や「働きがい」を高める能力や、向上意欲など、いくらでも深い層が存在する。

 

 安易に知識やノウハウを与えると、第2層、第3層以下の能力が育たず、結果的に人材は育たなくなってしまうのだ。

 

 横田「教えたら自分で学ぶという力がなくなってきますよね。こうしなさい、ああしなさいって教えまくったら、相手はいわれたとおりにやるロボットになります。後でわかったのですが・・・いわれたとおりにやっていると、最後はいわれたことすらできない人になります」(P153)

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑪

 

 日本経済が破竹の勢いで伸びていた1970年代、アメリカでは日本型の企業経営の研究が盛んだった。ベストセラーになった『セオリーZ』は、日系アメリカ人の経営学者、W.G.オオウチ氏がソニーの創業者盛田昭男氏などに取材して書いたものだ。その中には、「信頼」「ゆきとどいた気くばり」「親密さ」などの重要なポイントの指摘もある。しかしながら、すべてを論理の世界でまとめてしまう経営学という学問は、日本の特徴的経営システムは下記の7つだ、と断定してしまった。

 

1.終身雇用

2.遅い人事考課と昇進(役職者になるのに10年等)

3.非専門的な昇進コース(結構職場をまわり、ジェネラリストが育成される)

4.非明示的な管理機構(評価や意思決定の基準や目標が具体的な形で示されない)

5.意思決定への参加的アプローチ(重要な決定は稟議等という形態)

6.集団責任

 

 もちろん、「4.非明示的な管理機構」は、「フロー経営」の一端をほのかに示しているが、オオウチ氏も日本型の経営の真髄には迫る事が出来なかったように私には見える。

 日本型の経営の本質は、この本で紹介した横田英毅さんの経営学の中にあり、合理性の追求だけでは見えてこない人間に対する深い愛情と理解がベースになっており、1990年以前の日本企業には多かれ少なかれ、その要素があったように思う。

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑫

 

 日本の経営者のほとんどは、日本型経営の良さを自覚していなかった。したがって、1990年にバブルがはじけると、焦ってアメリカ流の「合理主義経営学」や成果主義などを導入した。それまで、自覚することなく「フロー経営」を実施し、好業績につなげてきた富士通やソニーは大きなダメージを被った。

 

 そのことに気づかせてくれたのは、東大の高橋伸夫教授による『虚妄の成果主義』(日経BP,2004年)だった。この本と、チクセントミハイとの出会いが、私を「人間性経営学」探求に駆り立てたといえる。

 

 横田英毅さんは、巷にあふれていた「合理主義経営学」礼賛論に惑わされることなく独自の経営を貫き、日本型経営にさらに磨きをかけた。以下、本書から引用する(P162)。

 「横田さんが実施してこられ、私が井深さんのマネジメントの中から抽出して体系化してきた「フロー経営」「燃える集団型マネジメント」「人間性経営学」などは、いまの日本の産業界ではごくごく少数意見にすぎない。

 こちらは、創業期のソニーで実行されていたり、どちらかというと日本の企業経営の底流に密かに存在していた。私自身もソニーの経営がおかしくなってからようやく気付いたくらいで、確かに存在はしていたのだが、人々は意識することがなかった、というのが真相だろう。

 

 世の中で経営学というと「合理主義経営学」しか知られておらず、日本の企業は表向きには「合理主義経営学」を標榜しながら、実質的には徳を積んだ経営者の裁量で「人間性経営学」のエッセンスが実行されていたのだ。両者は相矛盾しており、エッセンスを実行するためには微妙な舵取りが要求される。それは見ようによっては、日本的な”いい加減さ”に映るだろう。

 

 時代が進んで、経営者の器量が小ぶりになってくると、その”いい加減さ”を許さなくなり、エッセンスは継承されずに「合理主義経営学」一辺倒になっていった。

 その意味では、従来の密かに実行するやり方を離れて、表だって正々堂々と「人間性経営学」を実行してきた横田さんの実績、影響力はとても貴重だ」

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑬
 

 

 この本の最初のタイトル案は「時の流れは最強の武器」、横田英毅経営学の真髄をあらわしている。少しづつ、少しづつ改善を進め、何十年かたてば他社が追随を許さないレベルになっている、という意味。これを「進化(revalution)」という。
 そのときに、方向性がぶれないように、しっかりした「目的(企業理念)」を立てることが重要。一般の企業は、数値化出来る「目標(売上、利益、シェア、規模など)」ばかりを追って、「目的」が定まっていないから、右往左往してちっとも「進化」できないという。そういう会社はしばしば「改革(inovation)」に走る。短期的に、急に方向性を変えようとするのだ。短期的に出来ることは、他社もすぐ出来る事なので本当の競争力にならない。
 確かに、オーナー経営者ではないサラリーマン経営者は、就任するとすぐに「改革」を主張する傾向がある。自分の存在感を示さなくてはならないからか・・・。横田さんに言わせれば、少しづつ毎日改善が出来ていないから、理想とのギャップが大きくなって「改革」が必要になってしまうのだ、という。
 「進化」の力はすごい、単細胞動物が長い年月の間にヒトになる。単細胞動物が短期的な「改革」を進めても、単細胞動物同士の競争には勝てるが、脊椎動物まで進化してしまった相手には勝てる訳はない。
 ただ、生物の「進化」だったら何十億年、企業の進化だったら何十年、気が遠くなるほど長い年月が必要だ。

横田「世の中はすぐいい結果が出る手っとり早い方法というのが横行していて、みんなそれに飛び付きますね。セミナーなんかも、こうすればたちまち売り上げ3倍とか、これだけ短い期間で株式上場とか、そういうのが結構もてはやされるじゃないですか。私のところみたいに”よい会社を30年かけて作りましょう”というセミナーをやったらたぶん誰も来ない(笑)」(P196)

 

 


 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑭

 
 「改革」がすべて悪い訳ではなく、優れた経営者がつぶれそうな会社に乗りこんでたちまち活性化して回復させることもある。稲盛和夫さんのJAL再生がその好例。これは救急医療に相当し、死から救うための緊急処置だ。
 ところが「改革」を標榜して、せっかくうまく回っていた企業を破綻に導くことも良くある。以下引用する(P199)。

 『マネジメント革命』(講談社)という本を書いた時に、「ダメ上司」の例をいくつかのパターンに分類したが、そのひとつに「改革かぶれマネジメント」をあげた。
 これは、新しい支店長が就任した時などによく起きる。「お前たち、なんて馬鹿なことをやってきたんだ」と、前任者のやり方をすべて否定し、自分独自のやり方を押し付けることをいう。

  「改革かぶれマネジメント」の定義
仕事のやり方から目標設定まで、従来のやり方をすべて変えないと気がすまない。自分を改革のヒーローに位置づけ、酔う。そのためうまくいっていたシステムまで破壊してしまう。

 この定義は1995年にソニーのマネジメントが変わり、来るべきネットワーク時代に備えるという大義名分のもとに、それまでソニーをユニークな会社に育て上げた「技術革新の精神」「物づくりの伝統」「フロー経営」などをすべて破壊してしまったという体験にもとづく。
 「改革かぶれマネジメント」というのは、自分だけが物事がよくわかっており、従業員は皆バカだ、という発想だ。したがって、典型的な「賢者の演出」であり、抑圧された劣等感がベースになっている。



 

天外伺朗『教えないから人が育つー横田英毅のリーダー学』(講談社)・・情報⑮

 
 重版が決まった。発売後3週間で重版というのは比較的いいペースだろう。
この本は、横田英毅さんの経営学を解説するとともに、低迷するソニーをはじめとする家電業界再生の願いを込めたつもりだ。最近は円安、ウオン高に振れているが、昨年初の水準でいえば、1970年に比べれば円は4.5倍、ウオンは1/6の為替レートになっている。つまり長期的には27倍の差が開いていたのだ。その中で競争するためには、いくら経費節減や選択と集中をやってもダメで、かつてのソニーやアップルがやってきたように、他の追随を許さない「画期的な商品」を開発する以外にない。そのためには、どうしても「フロー経営」が必要になる。サラリーマンを何百万人集めても「画期的な商品」は出てこないのだ。